2026年注目するデジタル界隈3つの重要トピック

2026年の幕開けにあたり、デジタルプラットフォーム界隈の動向を展望してみたいと思います。 元々は大学での講義用トピックとして整理し始めたものですが、Digital Evangelistとしての所感を交え、新年初のブログとして公開します。

大きな傾向を一言で言えば、「AIが社会を激しくかき混ぜる年」になると確信しています。 昨年、生成AIの利用が一気に広まったその反動が来ます。 そんな懸念と期待を3つのトピックにまとめてみました。

1. 生成AIの「成長痛」:権利の衝突と特化型アプリ・エージェントへの分化  

AIが本格的に普及し始めた2025年。2026年はその余波として、リスク面が噴出します。早速この年末年始もSNSで、生成AIを悪用して女性の写真を水着姿などに同意なく変更した画像の投稿が話題となりました。これは特定の生成AIだけの問題ではなく、「誰でも、一瞬で、簡単に、権利者の同意なく」現実を改変できてしまうツールが民主化されたことの深刻な副作用のようなものといえるでしょう。

他にもAIの学習ソース、特にクリエイティブ系生成AIの学習ソース問題は、著作権侵害の議論を超え、クリエイターの生存権をかけた大きなうねりとなっていきそうです。また、そうして作られた生成AIに「勝手に加工されない、学習されない権利(オプトアウトの法制化など)」も重要なトピックとなるはずです。

そして詳細は次のトピックに譲りますが、当然ディープフェイクなどによる詐欺、社会混乱も何度も世界中で話題になると思います。

しかしそうした負の面だけでなく、生成AIを使ったアプリケーションの“独自の進化”にも注目しています。これまで「生成AI=ChatGPTやGemini」と一括りに語られがちでしたが、実際にはLLM(基盤)とアプリ(体験)は別物です。2026年は、この“アプリ側”の進化が面白くなると見ています。例えば、PerplexityやGensparkのようなアプリ/サービスです。これらは単なるチャットツールではなく、私たちの思考や表現のプロセスに深く入り込む「相棒」となっていく可能性を秘めています。

2. AI技術が加速させるサイバー詐欺の産業化

昨年末の記事でも軽く言及しましたが、オンライン詐欺は増加の一途を辿っています。AI技術の進化により、攻撃側は驚くほど低コストで「質の高い」攻撃を仕掛けてくるようになります。

ディープフェイクによるなりすまし、AIエージェントによる多段階攻撃(SNSで接触し、信頼を得てから偽サイトへ誘導する一連の流れ)の自動化など、詐欺の「産業化」が進行します。AIエージェントは本当に悩ましい存在です。我々の仕事や生活を便利にしてくれる一方で、オンライン詐欺のPDCAを高速かつ自動で回すことができ、攻撃の試行回数が増える可能性は高いと思います。

ここでは、ユーザー側のデジタルリテラシー向上とプラットフォーム側の技術的対策の両輪が不可欠です。どんなに気をつけても、ネットの経験の浅い若者や、新しい技術に不慣れなシニア世代をターゲットとした攻撃を個人の努力だけで防ぐのは限界があります。

この辺りは、昨年立ち上げた一般社団法人トラスト&セーフティ協会の活動とも深く関わります。リテラシー教育に加えて、プラットフォーム側がいかにして被害を減らすことが出来るか。業界の垣根を超えた対策を加速させたいと考えています。

3. AIの物理空間進出:AI × Robot、AI × ARグラス

2026年、いよいよAIが画面の中から飛び出し、物理世界へ本格進出します。 「とっくに進出してるよね?」という声もあるかもしれませんが、より一般化していく、とでもいいましょうか。これまでのAIが「情報の整理屋」だったとすれば、これからのAIは「物理的な介入者」になりうるのです。特に注目しているのはこちらの2つ。

  • Robot × AI: 様々な形でロボットにAIが入り込んでいきます。これは製造・建設・物流での実用化が加速し、深刻な労働力不足を補う救世主となる一方で、自律型兵器への転用といった安全保障上の脅威も現実味を帯びてきます。人型ロボットも自動車くらいの値段で手に入るようになりますし、例えば人型ロボットと公共交通機関に乗る場合の料金や、ロボットによる暴力の対応など、大小新しい課題が噴出することは間違いありません。
  • ARグラスの普及: AppleやMeta以外のプレイヤーからも、軽量で高性能なAI搭載グラスが登場し始めます。街なかでスマホを出さなくても目の前の表示がナビとなって目的地まで誘導してくれるのは大変役立つ機能でしょう。AIが「私たちの見ているもの」をリアルタイムで理解し、ガイドし、時には勝手に記録する社会。利便性の裏側で、プライバシーの境界線がこれまで以上に話題になるでしょう。

AIが物理空間をこれまで以上に「認識」し、「行動」する時代。セキュリティの概念は、もはやデータ保護だけでなく、物理的な身体の安全保護(セーフティ)へと拡張されていく必要がありそうです。

まとめ

今年の注目ポイントは以上となります。いかがでしょうか。

こうして見てみると、2026年は、AIに対する「魔法への期待」という時代が終わり、「現実社会との摩擦」をどう解決するかが問われる年になるでしょう。

技術の進化は止められませんし、止めるべきでもありません。しかし、その進化が「誰かを置き去りにしないか」「誰かの権利を不当に踏みにじっていないか」に注目し、調整する機能が、今ほど求められている時はありません。

私自身、教育者として、またトラスト&セーフティに携わる一人として、この「光と影」が混ざり合う2026年のデジタル空間を、より健全で信頼できる場所にできるよう動いていきたいと思います。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

株式会社Digital Evangelist 代表 金谷武明